「木造建築物の防耐火設計法」の講座へ

あらためて学ぶ木造塾講座木造建築物の防耐火設計法

先日、神奈川県建築士会に設置されている技術支援委員会・木造塾部会と青年委員会とで共催された「あらためて学ぶ木造塾講座」第2回 木造建築物の防耐火設計法の講座へ参加してきました。建築基準法は、RC造を前提に成立しているんですよね。一級建築士の法規の講座の余談で、担当講師がこのことについて話していて、ちょっと怖さを感じたことを思い出しました。もちろん段階的に法改正されてきていて、今では木造による耐火構造まで可能になりましたが、このあたりは近年になってどんどん整備されてきている分野のため、継続的な勉強は欠かせないこともあり、足を運んできました。

「あらためて学ぶ木造塾講座」【木造建築物の防耐火設計法】

実際のところ火事になったら建物はどうなるのか?実際の火災から考えて建物をどう設計していけばいいのか?2016年12月に起きた糸魚川大火のような災害に対して設計者として何ができるのか?火災に対して建築基準法の成り立ち、改正された改正建築基準法についてなど、木造3階建て学校実大火災実験の結果などを踏まえながら進行。講師は桜設計集団の加來千紘先生、軽快な語り口であっという間に時間が過ぎました。

燃え抜けないこと、燃え拡がらないこと。

隣棟火災内部火災

建物火災は、隣棟火災と内部火災に大別できること、隣棟火災に対しては燃え抜けないこと、内部火災に対しては燃え拡がらないこと、何が燃えて火災になるのかを知ること、このあたりが大きなポイントでした。燃え抜けないこととは、俗いう延焼を防ぐということ。隣から隣へと次々燃えてしまい大火になりますが、それを防ぎましょうということ。大火の後にポツポツと燃え残る建物がありますが、こうした建物が増えていけば、火災に対して壁となり、延焼を防ぎ、糸魚川大火のような大火災を防げるという考え方です。燃え拡がらないこととは、仮に火が付いたとしても燃えるものがなければ拡がることはなく、時間ととも自然鎮火へ向かうということ。そのために、如何に火の元から可燃物をなくすか、もしくは離すなど設計上の工夫、生活上の工夫で普段考えている以上に危険性を減らせることを知りましょうということです。何が燃えて火災になるのかとは、火災は家具や収納物へ引火すると大きくなりやすいということを知ること。某大手通販会社の巨大倉庫火災などが典型例です。内装や構造も燃えますが、仮に構造を耐火構造、仕上げを不燃仕上げとしても、収納物などがどんどん燃えていくので、それだけは必ずしも安全にはなってくれないというです。

木材を太く・厚く使う。燃え拡がりをコントロールする。

木材の燃焼

その後、木材の燃焼についての話が続きました。火災時の木材の表面の炭化速度が、1mm/分が目安であること、自然素材でも化学素材でも、一酸化炭素は同じように発生すること、木材はゆっくり燃えるのが得意な一方で、自分で消えるのは得意じゃないこと、の3点は非常に興味を惹かれました。木造建築物の火災安全のポイントとして、燃え抜けない、壊れないように木材を太く・厚く使うこと、火災の拡がりをコントロールすること、という結びです。このあたりの実験・検証のおかげもあり、改正建築基準法では、防火地域・準防火地位内の高さ2mを超える門・塀を不燃材料以外で建設が可能になったそうです。塀の燃焼が建築物間の延焼に悪影響を与えないことという前提ですが、厚さ24mm以上の木材で隙間なくつくる(燃え抜けない)ことで可能になるそうです。(他には土塗り壁30mm以上など)

設計者として、内装の燃え拡がりを抑制する「内装制限」、安全に非難するための「避難安全措置」、構造体を燃えにくくする「防耐火構造制限」、火災を最小限の面積にとどめる「防火区画等」を考えておくことの重要性を説かれていました。 ちなみに桜設計集団では、竣工時にお祝いとして、お酢の消火器をプレゼントしているそう。普通の消火器だとすごく汚れるので、例え火が出たとしても使用を躊躇しがちだけれど、お酢であればそんな心配もなく、さっと使えるだろうからと。確かにそうですね。真似したいところです。

住宅の火災対策としては、まず出火源の対策。要するにキッチンや裸火タイプの暖房器具です。ガスコンロは当然として、IHであっても天ぷら火災などはたくさん起きているので過信してはダメ。最近の見せる収納も、見えている分だけ可燃物の表面積が増えるので着火しやすく燃え拡がりやすいです。裸火タイプの暖房器具は使わずに済ませられるなら使わないこと。そして住宅の火災原因で一番多い放火対策。これは建物周りに死角をつくらないこと、燃えやすいものを見えるところに置きっぱなしにしないことなど、気を付けていきたいところです。余談ですが、昔の映画『バックドラフト』も放火犯の映画でしたね。BGMもよくて好きな映画です。確か料理の鉄人のBGMとしても使われていたと思います。

仮に火が出てしまったとしても、すぐに対処できるようにしておくことも大切です。火災警報器をちゃんとつけること、出火確立の高い部屋には消火器を置くこと、外ではバケツに水をくみ置きしておくとなど。バケツに関しては、この最初の一杯の迅速さが火災を大きくしない効果が高いそう。火災警報器に関しては、連動型がおすすめだそうです。単独型だと火の元と違う部屋にいた時など警報音に気が付けないこともあるそうで、設置されているものが一斉に鳴る連動型が、発見にも対処にも勝るそうです。

火災は成長する災害。初期・成長期・最盛期、どの段階で何を守るのか。

建築技術2019年10月号

建材には不燃材料、準不燃材料、難燃材料とありますが、決して燃えないわけではなく、燃え始めるまでの時間が違うだけです。不燃材料が20分、準不燃材料が10分、難燃材料が5分です。仮に火が出たとして、気が付くまでどのくらいの時間がかかるのか、そこから人が消火できるまでどのくらいの時間が必要なのかなど考えて、設備や材料の選定を進めていくことで、火災に強い住まいについて考えていきたいと強く思いました。 これからの時期が一番火災の多い時期、気をつけていきましょう。 関係者の皆様、ありがとうございました。 ご紹介いただいた『建築技術』2019年10月号にて、より知識を深めようと思います。