「市街化調整区域にある既存住宅を賃貸に出せるのか?― 第三者への賃貸について ―」
結論
「市街化調整区域にある既存住宅でも、第三者に賃貸できる可能性あり。ただし、建物の建築経緯や土地の利用履歴、当初の許可条件によって判断が異なるため、まずは自治体の開発指導課などに相談し、賃貸が可能かどうかを確認して判断」
市街化調整区域では、都市計画法によって建物の新築や用途変更などが制限されているため、既存住宅であっても、第三者に自由に貸せるとは限りません。特に農家住宅や分家住宅などでは、誰が住むために建てられたのか?という点も重要になります。
一方で、近年は空き家の増加などを背景に、国土交通省が既存住宅の利活用に向けた用途変更許可の弾力的な運用を促している点も見逃せないところ。今回は、市街化調整区域にある既存住宅を、第三者に賃貸する場合の法制度について整理してみました。
1.住宅なのに、なぜ自由に貸せないのか?
市街化調整区域では、建物を建てる際に、その用途や使用する人などに条件が付いている場合があります。例えば農家住宅は、農業を営む人が住むことを前提に建築が認められています。そのため、建物を住宅として使い続ける場合でも、当初の住人が退去し、その後に農業とは関係のない第三者に貸すことが制限される可能性があります。
主に次のような違いがあります。
- 農家住宅(いわゆる本家):農業を営む人が住むために建てられた住宅
- 分家住宅:農家などの家族が独立して住むため、特別に認められた住宅
- その他の住宅:上記とは異なる根拠で建築された住宅
注意が必要なのは、よく聞く「本家だから貸せる」「分家だから貸せない」という単純な区別では無い点です。
その住宅が、いつ、どのような根拠で建てられたのかが重要。
建物の外観や所有者だけでは判断できないため、建築経緯を確認する必要があります。
2.線引き前から存在する住宅なのか?
もう一つ重要なのが、建築された時期です。市街化区域と市街化調整区域を区分した日を「線引き日」といいます。例えば、私が住む平塚市では、原則として1970年(昭和45年)6月10日が線引き日。この線引き日を基準に、住宅の取扱いが変わる可能性もあります。
- 線引き前から存在する住宅:当時の建築経緯などによって、第三者への賃貸が認められる可能性あり。
- 線引き後に建てられた住宅:農家住宅や分家住宅など、当初の建築条件による制限あり。
線引き前から建っていれば必ず貸せるわけでもない点に重ねて注意が必要です。
線引き後の建替えや増改築などの履歴も影響があるため、この点も確認が必要。
3.土地が線引き前から宅地だったかも重要
建物の建築時期と併せて確認したいのが、土地そのものが、いつから宅地として利用されていたのかという点です。例えば、私が住む平塚市には「提案基準18(既存宅地)」という許可基準があり、線引き前から宅地だった土地について、一定の条件を満たす場合に建築を認める制度があります。
判断材料になるのは、次のような資料。
- 土地の登記記録(過去の地目など)
- 固定資産土地課税台帳(過去の宅地課税)
- 建築確認や農地転用許可などの履歴
- 過去の航空写真など、土地の利用状況がわかる資料
平塚市では、固定資産税の評価を根拠とする場合、原則として昭和46年(1971年)1月1日時点で宅地として評価されていたかという点も判断材料になります。つまり、建物が線引き後に建てられていても、土地自体はそれ以前から宅地だったという可能性もあるわけです。ただし、土地が既存宅地として認められることと、既存住宅を第三者に貸せることは別の判断です。
土地の利用履歴についても、確認が必要。
4.農家住宅や分家住宅でも、賃貸できる可能性はある
市街化調整区域の農家住宅や分家住宅であっても、一定の条件を満たせば、賃貸に出せる可能性があります。例えば、平塚市には「提案基準20(建築物の用途変更)」という制度があります。農家住宅や分家住宅については、主に次のような条件が設けられています。
- 当初の建築主本人に10年以上の居住実績があること
- 農業を営む資格を失った、家族の死亡、経済的事情など、やむを得ない理由があること
- 建物が適法に建築され、現在も適法な状態であること
もちろん、10年以上住んでいれば、自動的に第三者へ貸せるわけではありません。また、相続によって、当初の居住者に関する制限が自動的になくなるわけでもありません。賃貸にだせるかどうかは、申請者や使用方法などの条件も含め、個別の確認が必要です。
5.まずは開発指導課への相談から
市街化調整区域にある既存住宅を賃貸に出す場合、まずは建物と土地の履歴を確認することが第一歩。相談するに当たって、次のような情報を整理しましょう。
- 建物の情報:所在地、建築年、規模、当初の建築許可など
- 建築の経緯:新築なのか、以前の住宅の建替えなのか
- 土地の履歴:線引き前から宅地だったか、過去の登記や課税の状況
- 居住の履歴:これまで誰が、どのくらいの期間住んでいたのか
- 空き家となった事情:いつから、どのような理由で空き家になったのか
- 今後の利用方法:誰に、どのような形で貸す予定なのか
こうした情報をもとに、第三者への賃貸が認められるのか?、必要な許可手続きがあるのか?などを確認します。これら、都市計画法上の制限を確認する必要があります。
まとめ
市街化調整区域にある既存住宅でも、第三者に賃貸できる可能性はあります。農家住宅や分家住宅では、建築当時の条件によって、使用できる人が制限されますが、必ずしもダメではないということ。
スタート地点は、次の3点の確認。
- 建物:いつ、どのような根拠で建築されたのか?
- 土地:線引き前から宅地として利用されていたのか?
- 許可条件:第三者が住宅として利用することに制限があるのか
このあたりの情報をそろえて、自治体の開発指導課などに相談し、何が可能で、何が難しいのかを確認していくことになります。
空き家となった住宅も、誰かが暮らすことで、輝きを取り戻します。使い続けられる環境を整えることができれば、既存住宅の利活用はとても魅力的な選択肢です。
参考資料
- 平塚市「市街化調整区域に関する都市計画の決定の日とは」
- 平塚市「提案基準18(既存宅地)」
- 平塚市「提案基準20(建築物の用途変更)」
- 国土交通省「空家等の既存建築物の用途変更許可の弾力化について」
- 国土交通省「開発許可制度運用指針の一部改正について」(2016年12月27日)
※本記事は2026年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な整理なため、実際には建物の所在地を管轄する行政機関等への個別確認が必要です。
