埋木あとを探せ!

 先日、現場を訪れたときに発見した、ビスの頭を隠すための小さな埋木。ビスで留めたときにできる凹みに木を埋めて、表面を整える。言葉にするとそれだけですが、とても手間のかかる仕事ですし、大工さんだからと言って誰にでもできる仕事ではないです。しかも今回は、出来上がってしまえば、死角になるのでほぼ見えないところ。それでも、きちんと手をかけて仕上げてくれていました。

 こういう仕事を見ると、ありがたいなと思います。作り手の気持ちや姿勢が見える気がします。家づくりは、お施主さんだけでも、設計者だけでもできません。考えたこと、図面に描いたことを、実際の形にしてくれる職人さんたちが必要です。その人たちがどう考え、どう手を動かしてくれるかで、出来上がるものは変わってきます。

 例えば料理なら、同じ食材、同じレシピでも、つくる人によって仕上がりが変わります。下ごしらえの丁寧さ、火の入れ方、ちょっとしたひと手間。食べるときには見えない仕事も、おいしさを支えています。

 家づくりも同じ。同じ図面、同じ材料であっても、つくる人によって細部の納まりや仕上がりは変わります。大工さんという同じ職業でも、得意な仕事も、経験も、細部への向き合い方も、それぞれ違うんですよね。

 間取りやデザイン、キッチンやお風呂を選ぶのと同じくらい、「誰がつくってくれるのか」にも関心を持ってほしいなと日頃から思っています。今回の小さな埋木は、そのことをあらためて感じさせてくれました。

 こちらのお施主さんは、何度も現場に足を運んでくださっています。大工さんとも、すでに気心の知れた関係です。自分の家を、どんな人が、どんなふうにつくってくれているのか。それを実際に見て、言葉を交わしながら、家が出来上がっていく。

 大工さんに限らず、家づくりにはたくさんの職人さんが関わります。それぞれが自分の持ち場で、ひとつひとつ仕事を積み上げている。現場を訪れると、完成した姿からだけでは分からない、そんな家づくりの過程にも触れることができます。

 「この人たちが、自分の家をつくってくれている」という実感があることは、お施主さんにとっても、大きな安心につながるのではないでしょうか。私自身、大工さんをはじめ自宅をつくってくれた職人さんたちとは、今でも良い関係が続いています(もちろん両親も)。家が完成して、工事が終わったら、それですべて終わりというわけではないんですよね。家をつくる時間を通して、人と人との関係も生まれているんです。

 車のような工業製品にも多くの人たちが関わっています。ただ、自分のためにつくってくれる人と顔を合わせ、話をしながら、出来上がるまでの時間を共有できることは、注文住宅の大きな魅力だと思います。ここが工業製品と大きく違う部分かなと思います。

 完成した家に、つくってくれた人の顔や、現場で交わした言葉が重なる。そういう住まいには、仕上がりの良さとはまた別の、大切にしたくなる理由が生まれます。

 ほとんど見えなくなる「小さな埋木」。そこから家づくりの大切なことをいろいろ考えた1日でした。