市街化調整区域に立地する既存住宅の利活用について検討

「既存住宅を福祉施設として活用できるのか?」

結論

「市街化調整区域にある既存住宅を福祉施設として活用は、法的な制限が厳しいものの、条件によっては可能性あり。まずは所在地を管轄する自治体の開発指導課に相談し、用途変更が可能かどうかを確認する」

 都市計画法によって、市街化調整区域における建築物の利活用(用途変更)は原則として制限されています。その一方で、近年は空き家や古民家などを地域資源として活用するため、国土交通省が用途変更許可の弾力的な運用を促しています。

 ただし、どのような施設でも認められるわけではなく、建物の建築経緯や施設の用途、自治体の許可基準などによって判断が異なる点に注意か必要です。

 今回は、既存の一戸建て住宅を福祉施設として活用する場合を想定して、法制度の概要を整理してみました。

1.市街化調整区域では、利活用(用途変更)も制限される

 市街化調整区域は、都市計画法に基づき、新築だけでなく、既存建築物の用途変更(利活用)についても制限があります。特に重要なのは、その建物が、いつ、どのような根拠で建てられたのかという点です。次のような違いあり。

・市街化調整区域に指定される前から存在する住宅

・指定後に都市計画法の許可を受けて建てられた住宅

・農家や農家の分家など、特定の条件によって建築された住宅

※市街化区域と市街化調整区域を区分した日を「線引き日」といいます。例えば私の住む平塚市では、1970年(昭和45年)6月10日

同じ一戸建て住宅でも、建築の経緯によって取扱いが異なるため、まずは当初の許可内容などを確認するのが第一歩。

2.2007年の都市計画法改正で何が変わったのか

 福祉施設の立地については、2007年(平成19年)11月30日に施行された都市計画法の改正が重要な転換点になっています。この改正によって、それまで原則として開発許可が不要だった社会福祉施設や医療施設、学校なども、原則として許可の対象に。つまり、社会福祉施設という公益性のある用途であっても、市街化調整区域に自由に立地できるわけではないということ。既存住宅を福祉施設に転用する場合も、こうした規制を踏まえて検討する必要があります。

3.既存建築物の利活用に向けた運用の弾力化

 一方で、近年は既存建築物を積極的に活用しようという動きもあります。2016年(平成28年)、国土交通省は「開発許可制度運用指針」を改正し、市街化調整区域にある空き家や古民家などの用途変更について、弾力的な運用を促す技術的助言を発出しました。背景には、人口減少や高齢化による空き家の増加、既存集落のコミュニティ維持などの課題があります。用途変更(利活用)の例として、次のような施設が示されています。

・地域の観光振興に必要な宿泊施設や飲食店

・移住・定住を促進するための賃貸住宅

・高齢者等の福祉増進に寄与するグループホーム

 ただし、これは用途変更が一律に認められる制度ではないことに注意が必要。実際に許可を受けられるかどうかは、自治体の許可基準や個別の計画内容によって判断されるため、事前に開発指導課に相談することが大切なポイント。

4.福祉施設への転用は認められるのか?

 国土交通省は福祉関連施設への転用を例示していますが、福祉施設であれば、どんな施設でも認められるわけではありません。例えば、次のような点が判断材料になると考えられます。

・どのような種類の福祉施設なのか

・建物の建築経緯や現在の適法性

・その場所に施設を設ける必要性

・地域の生活やコミュニティとの関係

・自治体が定める用途変更の許可基準

 また、自治体によっては、通常の許可基準に該当しない場合でも、開発審査会の審議を経て例外的に許可される仕組みがあります。

5.都市計画法以外にも注意

 福祉施設として利用する場合には、都市計画法だけでなく、他の法令への適合も必要です。主なものとしては、次のような法令や基準があります。

・建築基準法(用途変更・避難・防火など)

・消防法(消防用設備など)

・バリアフリー関係法令・条例

・福祉施設の設置・運営に関する基準

 なお、2019年(令和元年)の建築基準法改正では、一定の用途変更について、確認申請が必要となる床面積の基準が100㎡超から200㎡超へ引き上げられました。ただし、建築基準法上の確認申請が不要でも、都市計画法上の許可まで不要になるわけではない点には重ねて注意が必要です。

6.まずは開発指導課への相談から

 市街化調整区域にある既存住宅の用途変更では、自治体ごとの許可基準の確認が重要。そのため、まずは建物の法的な位置付けを確認し、自治体の開発指導課へ事前相談しましょう。相談に当たっては、次のような情報を整理しておくのがおすすめ。

・建物の情報:所在地、建築年、規模、当初の建築許可など

・予定する用途:福祉施設の種類、利用人数、使用方法など

・計画の概要:改修の有無、施設として必要な機能など

・土地や建物の使用履歴:過去の登記記録や固定資産課税台帳などから確認できる土地や建物の利用の状況

※特に、線引き前から宅地として利用されていたかどうかは、土地や建物の法的な位置付けを調べるうえで重要な情報

まとめ

 市街化調整区域にある既存住宅の利活用は、決して簡単ではありません。一方で、人口減少や空き家の増加などを背景に、既存建築物の利活用に向けた制度運用の見直しも進められてきています。これまで住宅として使われてきた建物を、地域や社会に必要な施設として再生することができれば、建物を使い続けることに新しい価値が生まれ、地域の活性化につながります。

 ただ、実現にはさまざまな法的条件を満たす必要があります。まずは開発指導課に相談し、何が可能で、何が難しいのかを確認すること。そこから、既存建築物を活かす方法を考えてゆくことになります。

 私自身、ヘリテージマネージャーとして既存住宅の利活用に関わる機会がありますがこれまでの事例を振り返っても、簡単なものはひとつもありません。素晴らしい建物だけあっても、素晴らしい事業だけあっても、それだけではなかなか前へ進まず、苦戦している印象です。愛される建物と情熱の込められた事業がセットになることで、地元やその地域が自然と引き込まれ、お互いに共闘する形で歩みを進めてゆく。そんな形が目指すところだと考えています。

参考資料

国土交通省「空家等の既存建築物の用途変更許可の弾力化について」

国土交通省「開発許可制度運用指針の一部改正について」(2016年12月27日)

国土交通省「改正建築基準法が6月25日から全面施行されます」(2019年)

各自治体の開発許可基準・用途変更許可基準

※本記事は2026年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な整理です。具体的な計画の適法性や許可の可否については、建物の所在地を管轄する行政機関等への個別確認が必要です。