「幸せな仕事を幸せに終わるためにはどうしたらよいか」

建築紛争まえがき

記事タイトルは『建築紛争から学ぶ設計実務』のまえがき内のフレーズ。自分が設計者としてどう仕事をしていきたいのかについて、本当にこれがすべてです。 今日はこの本で勉強するために事務所で缶詰になっていました。法令について設計者として知っておくべきこと、特に事務所の代表になったので一度きちんと勉強しました。早稲田大学芸術学校でお世話になった後藤伸一先生が著者の一人で、授業の時に紹介いただいた本でもあります。

設計者としてのスタンス

現代の建築設計・技術教育において、安全性や長寿命性に対する価値を重んずる教育が行われてきたかという指摘がある。デザイン教育は重要であるが、建築主をはじめとするさまざまな関係者から信頼を勝ち取るような実務教育がなされてこなかったのではないだおうかという反省がある。本書はそうした反省に立ち、新たな実務教育のツールとして構想された。

『建築紛争から学ぶ設計実務』より

設計を自分の一生の仕事にしようと奮起して芸術学校へ行ったものの、どうしても上記のような思いは消えませんでした。授業では大きな建物しかやらないし、奇妙な形をつくったもの勝ちという印象は拭い去れず。自分はそれとは違う設計者になろうと思い続けて今に至ります。同じ思いの人には、下のTEDの動画も素晴らしいので、ぜひ見てほしいです。日本語字幕付けられます。設計者のスタンスとしてこうありたいと思ってます。

TEDTalks

難しい理屈ではなく、この設計者は信用できるか?ということ。

その信頼を獲得するために、デザインや計画、あるいは技術が優れているだけでなく、建築主の立場になって考え、建築主に説明し、報告し、そして確認することが求められる。

『建築紛争から学ぶ設計実務』より

調査・企画、基本計画、基本設計、実施設計、施工段階での実施設計、監理という各段階において、何が標準業務で何が違うのか、法適合性をどう考えるか、公法と私法の関係…、様々ありますが、結局は良好な信頼関係が築けるか?に掛かっているのは今も昔も一緒です。設計者とクライアントとが同じ方向を向いて、信頼関係を持って設計を進めていくことが理想。そうなれば、クライアントがより設計過程にも深く関われるはずだし、建物への愛着もより強くなり、ずーっとその場所に存在し続ける建築になるのではないかと思います。設計者としては、設計段階からきちんと説明責任を果たすことを肝に銘じていきたいです。

賠償責任保険は必須

建築士事務所が賠償責任保険に加入していないために、損害賠償責任を果たせず、建築主が被害から救済されないという事態は避けなくてはならない。

『建築紛争から学ぶ設計実務』より

建築士も人間なので、どれだけ気を付けていてもミスは必ず起こってしまいます。小さなミス、すぐに対処できるミスであればそれほど問題にはならないでしょうが、建築は金額が大きいですから、簡単にはいかない事態が発生することもあり得ます。その時のために必須なものとして、設計を頼もうと思っているお施主さまは、必ずその事務所が建賠に加入しているか確認しましょう。注意していればミスなんかしないなんてことないですし、建築行為は本当にたくさんの人の手仕事で成り立っていて、一定の割合でミスは起こるものですから。

設計事務所スタッフへの注意

建賠ですべてがカバーされるわけではないです。保険の対象とはならないことに、「建築士資格をもたない者の監理業務」がありました。施工者に対する指示書の作成業務や施工図の承認業務などがこれにあたります。これは後藤先生もいっていたと思い出したのですが、スタッフ個人が不法行為を理由に業務責任を問われ、訴訟によって損害賠償請求を受けることもあり得るということです。なので、きちんと資格は取りましょう。一級建築士にこだわるのではなく、二級建築士も受けましょう。ここで受験資格が変わりましたが、どんどん難しくなっていくはずです。一級建築士にはいつ合格できるのかわからない状態のまま、無資格のままは避けましょう。

建築確認を受けても法適合への責任はなくならない

特定行政庁や指定確認検査機関で建築確認申請を受けて、確認済証や検査済証を出してもらったからといって、設計内容に対する法適合への責任はなくならない点にも注意。工事中はもとより、竣工後でも違反があれば是正しなければならず、設計者も検査員も処分の対象になります。検査機関が良いと言ったからとか、確認済証を下したからとか、検査済証が下りたからとか、持ち主が変わったからとかは関係なくです。今後は、これまでは基本的に施工に関する問題は工事請負契約により施工者責任でしたが、民事においては設計者も損害額に対する負担割合で賠償責任を負うこともあるという点も肝に銘じておく必要ありです。

紛争処理

仮設住宅の基礎で使うビールのケースは空で届いた

TEDTalks

TEDには、坂茂さんのトークもあります。色々いわれていますが、災害時にさっと行動している唯一の大御所な建築家だと思うので、とても尊敬してます。自分が同じ立場で同じことができるだろうかと考えます。